カスタマーサクセスは、その名の通り「顧客の成功」を実現する業務です。カスタマーサクセスは、カスタマーサポートよりも積極的に顧客にかかわります。BtoBのサブスクリプションサービスとともに2010年代以降に一般化した比較的新しい職種ですが、現代ではサブスクリプション以外やBtoCビジネスにも有効な業務として多くの企業で取り入れられ、売上につながる成果を上げています。今回は、カスタマーサクセスとはどんな業務なのか、何をめざすのかを確認したあと、シャノンのカスタマーサクセス立ち上げ時と現在の実例をご紹介します。目次カスタマーサクセスとは、LTV最大化をめざす業務カスタマーサクセスとはカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いカスタマーサクセスが必要とされる背景カスタマーサクセスとはどんな業務か、メリットとデメリットは何かカスタマーサクセスの具体的な業務とKPIカスタマーサクセス導入のメリットとデメリットシャノンのカスタマーサクセス部門立ち上げと、他部門と連携の具体例カスタマーサクセスへの取り組み1年で解約数が7割減マーケティング部門のMAとカスタマーサクセスを連携する、5つの具体例まとめカスタマーサクセスとは、LTV最大化をめざす業務カスタマーサクセスとはどんな業務か、注目される背景、カスタマーサポートとの違いなどを確認していきます。カスタマーサクセスとはカスタマーサクセス(CustomerSuccess)を直訳すると「顧客の成功」ですが、ビジネス用語としてのカスタマーサクセスは、「顧客の成功」を実現するための業務、部門、専門職のことをいいます。カスタマーサクセスの業務は、企業の売上を創出するマーケティングと営業の活動のなかで位置づけられます。以下は現代の営業スタイルについての著書『ザ・モデル』で紹介されている図です。図が示すように、カスタマーサクセスは営業活動の結果取引が開始した顧客に対して、顧客の成功を働きかける業務です。図中のLTV(顧客生涯価値)については後でくわしくご紹介します。カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い顧客を支援するという意味でカスタマーサクセスと似ていて、もっと古くからある業務に「カスタマーサポート」があります。違いを確認しておきましょう。カスタマーサポートは顧客から疑問や不満、クレームがあった場合に対応します。しかし、カスタマーサポートに一切連絡をしてこない顧客は商品やサービスに満足しているのでしょうか。実際には、カスタマーサポートに連絡をしてくる顧客よりも多くの顧客が、静かにサービスを解約したり、商品の購入をやめたりしています。カスタマーサクセスは、このような「サイレントカスタマー」にも能動的に関わります。以下の表でカスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いをまとめています。カスタマーサポートカスタマーサクセス目的顧客の疑問・不満を解決顧客のビジネス成功を支援スタイル受動的(リアクティブ)能動的(プロアクティブ)顧客との接点メールや電話対面を含む顧客フォロー個別的継続的KPI応答件数など解約率、LTVなどカスタマーサクセスが必要とされる背景カスタマーサクセスの業務が重視されるようになった背景には、SaaSとサブスクリプションの浸透があります。SaaS(SoftwareasaService)とは、クラウド上に作られたアプリケーションやサービスを、インターネットを通じて利用することをいいます。現代は、MA・SFA・CRM、ストレージ、会計ソフトなど多くのサービスがこの形で提供されています。SaaSの多くは月額××円などの定額制で、このような料金システムを有するサービスを、サブスクリプションといいます。サブスクリプションモデルは顧客にとって契約のハードルが低く購入しやすい一方、解約することも簡単です。したがって企業側は解約されないために、顧客がサービスを十分に活用できるよう、契約後のフォローに務める必要性が生じました。こうして2000年代頃、SaaSビジネスの拡大とともにカスタマーサクセスが注目されるようになりました。BtoBのSaaSビジネスから始まったカスタマーサクセスは実績を上げ、今ではBtoCや幅広い業種に広がっています。たとえば飲食店や小売業などの場合、カスタマーサクセスは顧客が他社を選ばずに「リピート購入」を継続するよう、働きかける業務です。カスタマーサクセスとはどんな業務か、メリットとデメリットは何かカスタマーサクセスの業務内容、導入によるメリットとデメリットを確認します。カスタマーサクセスの具体的な業務とKPIカスタマーサクセスの具体的な業務は、以下のように多岐にわたります。商品やサービスの初期設定の支援オンボーディング(基本機能を使えるようになる)を支援利用状況をモニタリングし、利用が少ない顧客をフォロー顧客の個別課題をヒアリングし、解決策を提供顧客の要望をヒアリングし、開発部門に連携アップセル(追加購入)やクロスセル(他の商品/サービスの購入)のニーズを担当部門に連携ユーザー会などでユーザー間のコミュニケーションを促進顧客に役立つ最新情報の提供カスタマーサクセスのKPIとしては、解約率がよく用いられます。カスタマーサクセスは、顧客がある商品・サービスを十分に活用して満足している状態をめざすことはもちろんですが、そのことが顧客企業の成長に明確に貢献している状態をゴールとします。カスタマーサクセス導入のメリットとデメリットカスタマーサクセス部門が機能することにより、以下のようなメリットをもたらします。1) CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させるCX(CustomerExperience)とは顧客体験のことです。CXは商品/サービスを認知したときに始まり、営業担当者とのやりとり、契約・納品、購入した商品やサービスの利用まで、すべての段階における体験をいいます。そのなかでカスタマーサクセスが主に関わるのは「購入後」です。BtoB場合、CXの基準は明確です。購入した商品やサービスを利用した結果、「コスト削減」「売上アップ」などの数値化できる具体的な成果があれば、価値あるCXといえます。カスタマーサクセスは、顧客が対価以上の利益や利便性を得られるよう、支援します。2)解約率(チャーンレート)を下げる解約率、チャーンレート(ChurnRate)はカスタマーサクセスが重視する指標です。顧客が解約するときの理由はさまざまです。「コストに見合う効果が得られなかった」「担当者に他の業務もあり、ツールを使いこなせなかった」「不明点を問い合わせたときのサポートデスクの対応が不満だった」このような企業の事情は、カスタマーサクセスが対応することで回避できた可能性があります。顧客が解約を決断する前に、企業の課題を理解してソリューションを提案したり、他のプランを勧めたりといったフォローをします。定額サービスにおけるチャーンレートは、商品の販売においてはリピート購入をしなくなる「顧客の離脱率」が同じ意味の指標です。3)LTVを最大化させるLTV(LifeTimeValue)は顧客生涯価値と訳され、一顧客が自社にとってどのくらいの利益をもたらすのかを長期的に計測した指標です。高いコストをかけて新規顧客を獲得するよりも、既存顧客と長く取引を継続することを重視するべきという考え方にもとづいています。LTVを最大化するためには、アップセル・クロスセルを増やすことも重要です。アップセルとはより高額な商品/サービスを販売すること、クロスセルは、自社の別の商品/サービスを販売することです。LTVの最大化はマーケティングや営業などと共有する大きな目標ですが、カスタマーサクセスはその最前線に立っているといえます。4)多くのロイヤルカスタマーを創出するロイヤルカスタマーとは、自社の商品/サービスを大いに活用し、競合他社から購入する可能性が低い、「お得意様」あるいは「ファン」のような顧客のことをいいます。さらに、他の人に自社の商品やサービスを「おすすめ」してくれるのが理想的なロイヤルカスタマーです。顧客をこのようなロイヤルカスタマーへと引き上げるのもカスタマーサクセスの役割です。※ロイヤルカスタマーについては「ロイヤルカスタマーとは?その定義と、MA連携でロイヤルカスタマーを増やす手法」で詳しくご紹介しています。一方、カスタマーサービスを導入するデメリットは何でしょうか。カスタマーサービス部門が機能を果たすようになればデメリットはありません。しかし、当初の導入にあたっては以下のような障壁があります。1) 人材の確保が難しいカスタマーサポート部門を立ち上げるのに十分な人材が確保できない、新規に採用しようとしても簡単ではないという問題があります。2) 他部門との連携が難しいカスタマーサクセスは常にマーケティングや営業と連携して仕事をしていきます。分業化と専門化を進めながら成果を出すにはスピーディーな情報の連携や目標の共有が欠かせません。企業がカスタマーサクセスを導入する場合、「解約率が上がってしまった」などの課題がきっかけになっています。このあと、シャノンがカスタマーサクセスを導入したときの体験、現在実施しているカスタマーサクセスとマーケティングの連携についてご紹介します。シャノンのカスタマーサクセス部門立ち上げと、他部門と連携の具体例シャノンがカスタマーサクセス部門を立ち上げたときのストーリー、カスタマーサクセスとマーケティングの連携によって成果を上げている方法についてご紹介します。カスタマーサクセスへの取り組み1年で解約数が7割減国産MAを提供するシャノンはかつて、競合といえる商材が少なく、ブルーオーシャンで順調に営業活動をしていました。ところが、2015年頃から外資系MAベンダーが続々と日本に進出してきたことにより一気に市場はレッドオーシャン化して、シャノンの顧客も他社に流れ、解約率が上昇しました。そこで2018年にカスタマーサクセスへの本格的な取り組みをスタート。1年後には解約数を7割低減させることができました。6人の担当者が定例ミーティングや日々のコミュニケーションで顧客の意見や課題を吸い上げ、その解決策を提供。その結果は四半期ごとに評価していきました。この頃立ち上げたユーザー会は現在も継続しています。※シャノンのカスタマーサクセス立ち上げについて、以下のインタビュー記事でさらにくわしくご紹介しています。国産MAベンダーのシャノン、カスタマーサクセス実践1年で解約件数が7割減にマーケティング部門のMAとカスタマーサクセスを連携する、5つの具体例マーケティングはコールドリードをホットリードへと引き上げる、カスタマーサクセスは顧客を成功へと引き上げる、という似たベクトルの目標を持ち、どちらの部門も1to1の継続的なコミュニケーションが重要なので、両部門にはナレッジの親和性があるといえます。シャノンでは、カスタマーサクセスとマーケティングの連携を行っています。実際に実践しているデータ連携の具体例をいくつかご紹介します。1) サポートページを見ている営業担当やカスタマーサクセスに直接連絡はないものの、サポートページへのアクセスがあった場合は、仕様や操作方法などについて疑問が発生しています。早めにカスタマーサクセスから連絡をとり、問題解決できたか、ほかに課題はないかなどを確認するべき事例です。2) 解約に関連するページを見ている最も素早く対応するべき「解約アラート」もMAで取得しカスタマーサクセスに連携できます。前述したようにサブスクリプションサービスの場合は簡単に解約できるので、迅速な対応が求められます。3) 違う商品/サービスの資料をダウンロードしている顧客が契約中のサービス以外にも関心を示していると考えられます。カスタマーサクセスが状況をヒアリングし、クロスセルの可能性がある場合は営業担当などにパスします。4) ウェビナーへの申込があった主に見込み客向けであるマーケティング部門主催のウェビナーに顧客がエントリーすることもあります。情報を得たカスタマーサクセスは、顧客事情に合わせて個別にフォローします。アップセル・クロスセルへとつながる可能性もあります。5)顧客企業の別の部署、別の社員からのコンタクトがあったカスタマーサクセスがコミュニケーションをとっている顧客担当者とは別の人からの、LPへのアクセス・ウェビナー申込などがあり新規リードとしてMAに登録された場合です。このときもアップセル・クロスセルの可能性が考えられるので、まずカスタマーサクセスが情報収集し、その後は適切な部門で担当します。シャノンのMAでは、上記のうち1)~4)のようなデータを自動連携することができます。5)の場合だけは一元化されていないデータなので、登録された企業名を確認して手動で連携しています。まとめ本稿のポイントは以下の3点です。カスタマーサクセスとは「顧客の成功」を実現する業務で、BtoBのサブスクリプション型サービスの解約を減らすために生まれました。今はBtoCやサブスクリプション以外でも導入されています。カスタマーサクセスは顧客が価値あるCXを積み重ねることを目指し、その結果としてLTVを最大化することをゴールとして、能動的に顧客に関わります。カスタマーサクセス業務にとって、MAが取得する情報の連携が有効です。
カスタマーサクセス-カスタマーサクセスとは?業務内容、導入のメリットについて解説!
カスタマーサクセス-カスタマーサクセスとは?業務内容、導入のメリットについて解説!https://www.shanon.co.jp/blog/entry/ma_customer_success/