ロイヤルカスタマーとは何でしょうか。ぴったりの日本語に訳すことが少し難しいですが、「常連客」、あるいは昔ながらの「お得意様」といった表現が近く、特定の企業の商品やサービスに愛着を感じている「ファン」のような存在と言えるでしょう。たとえば、iMac、iPhone、AppleWatchなど、Apple製品が発売されるたびに購入する愛好家は、同社を支えるロイヤルカスタマーです。現在までの同社の急拡大は、ロイヤルカスタマーを大切にしてきたことも要因の一つです。このようなBtoCの事例がわかりやすいですが、BtoBにおいてもロイヤルカスタマーを重視する戦略が欠かせないものとなってきています。ロイヤルカスタマーを数多く創出・育成するためには、1to1コミュニケーションによる、きめ細かいアフターフォロー価値あるCX(カスタマーエクスペリエンス)の提供顧客の期待に応える新しい商品/サービスを生み出し続けることなどが必要です。今回は、主にBtoBにおいて、ロイヤルカスタマーを増やすためにカスタマーサクセスがすべきこと、MAの活用法などをご紹介します。目次企業にとって「優良顧客」より価値がある!? ロイヤルカスタマーとはBtoBにおけるロイヤルカスタマーの定義と、優良顧客との違いロイヤルカスタマーを増やすことのメリットカスタマーサクセスは、ロイヤルカスタマー獲得・育成のためにどう動くのかロイヤルカスタマーを増やすための、ロイヤルカスタマー分析と適切なフォローロイヤルカスタマー分析の指標「NPS」とはカスタマーサクセス自身が顧客のCX向上をはかり、ロイヤルカスタマーを育成最重要なのはスピードとタイミング状況の変化に対応するソリューションを提供1to1コミュニケーションを積み重ねる個別の顧客対応で意識したい「グッドマンの法則」とはお客様のお困りごとをMA連携で事前に察知する解約ページを見る仕様やサポートのページを見るプランや価格のページを見るまとめ企業にとって「優良顧客」より価値がある!? ロイヤルカスタマーとはロイヤルカスタマーとはどんな顧客か、ロイヤルカスタマーは自社にとってどんな価値があるのか、などについて解説していきます。BtoBにおけるロイヤルカスタマーの定義と、優良顧客との違いロイヤルカスタマーは英語でLoyalCustomer、直訳すると「忠実な顧客」という意味になります。マーケティングにおいては、ある企業の商品やサービス、あるいは企業ブランドそのものに対して愛着を持ち続けている顧客のことをいいます。具体的には以下のような顧客を指します。商品/サービスのブランド価値に共感し、長期利用やリピート購入をする競合他社から購入しない他の人に商品/サービスを勧めるロイヤルカスタマーは必ずしも「優良顧客」とは一致しません。大きな金額の取引があっても、1年後には他社サービスへと切り替えてしまう顧客もいますが、こうした企業はロイヤルカスタマーにあてはまりません。一方、取引額は小さくても、商品の良さをよく理解し、同業者に紹介をしてくれるような顧客企業はロイヤルカスタマーと考えられます。BtoBビジネスにおけるロイヤルカスタマーは、長く取引していると同時に良好なリレーションシップを保っている、いわゆる「お得意様」と呼べる存在です。たとえば、自社メディアの導入事例ページに登場し、商品の使いやすさを語ってくれるような取引先は貴重なロイヤルカスタマーといえます。ロイヤルカスタマーを増やすことのメリットロイヤルカスタマーを獲得・育成して増やしていくことのメリットは以下です。売上の向上ロイヤルカスタマーは商品/サービスを活用し、かつ愛着を持っているので、解約の可能性が低く将来の売上が見込めます。サブスクリプションのグレードアップや新商品の追加購入といったアップセル・クロスセル需要も期待できます。顧客獲得コストの削減新規の顧客を獲得するには多大なコストがかかりますが、一度取引した顧客をロイヤルカスタマーに育成すれば長期で取引を継続してくれるため、コストが削減できます。また、ロイヤルカスタマーが周囲に商品/サービスを口コミなどで広めてくれる宣伝効果により、コストをかけずに新規顧客を獲得できる可能性も高くなります。企業ブランドの確立に寄与商品を大いに活用してくれているロイヤルカスタマーの「この商品の改良版があればいい」「こんな機能があれば追加購入したい」などの具体的な要望は、開発部門にとって非常に参考になる情報です。また、典型的なロイヤルカスタマーをペルソナに設定して今後のブランディングの方向性を決めていくことで、既存のロイヤルカスタマーの期待に応えるとともにさらに支持を広げ、ロイヤルカスタマーを増やし、結果的に企業の成長をもたらします。カスタマーサクセスは、ロイヤルカスタマー獲得・育成のためにどう動くのかシャノンの場合、1人のカスタマーサクセスが担当する顧客は約40社。平均で週に一度コンタクトをとるとした場合、一日あたり5社となります。企業によってはカスタマーサクセスがもっと多くの顧客数を担当していることも多く、限られた時間のなかで顧客ひとりひとりに向き合うことはなかなか大変です。そこでカスタマーサクセスでは、顧客をLTVなどで分類して優先順位をつけます。取引額の多い顧客、今後の受注増が見込める顧客のほか、特に時間をかけて向き合うべき顧客を「ハイタッチ」、必要に応じて個別対応する顧客を「ロータッチ」、さらに最も数としては多い少額取引顧客を「テックタッチ」として、主にメールやWebサイトからの発信でフォローします。前述したように、ロイヤルカスタマーは単に「取引額が多い顧客」ではないので、LTVだけでハイタッチに分類することはできません。「取引額は少ないが、非常に活用してくれている顧客」「コミュニケーション頻度の高い顧客」などをハイタッチに分類し、ロイヤルカスタマーとなるようコミュニケーションを取り続ける場合もあります。難しいのは、ロータッチやテックタッチに分類されている顧客のなかに含まれている潜在的なロイヤルカスタマーを見つけ出すことです。そのためには、これらの層の顧客からの問い合わせなど何らかのコンタクトがあったときに的確に対応することが大切です。この点については、セクション2で述べます。ロイヤルカスタマーを増やすための、ロイヤルカスタマー分析と適切なフォローロイヤルカスタマーが企業にとって重要であることはわかっても、次に、どう増やせばいいのか?が課題となります。ロイヤルカスタマー育成のためには1to1コミュニケーションの対応が不可欠で、非デジタルの個別対応も必要です。以下で具体的な方法についてご紹介していきます。ロイヤルカスタマー分析の指標「NPS」とはロイヤルカスタマーは取引金額だけでは判断できないことはすでに述べました。そこで有効な指標となるのが「NPS」(NetPromoterScore、ネットプロモータースコア)です。NPSの測定方法ははシンプルです。「あなたはこの商品/サービスを他の人に勧めますか?」という質問について0から10までの11段階で回答してもらいます。その結果、顧客を以下のように、「推奨者」「中立者」「批判者」に分類することができます。この場合、9~10と回答した「推奨者」はロイヤルカスタマー、または将来のロイヤルカスタマーである可能性が高いといえます。似た指標として「顧客満足度」があります。しかし、アンケート調査で「満足」と回答した顧客が必ずしもその後ロイヤルカスタマーとならないのに比較して、「人に勧めたい」という回答がその後ロイヤルカスタマーに結びつく可能性が高いという調査結果が報告されています。企業のNPSは、「NPS=推奨者の割合-批判者の割合」として数値化されます。NPSは企業の成長率との相関性も高いとされています。NTTコムオンラインでは、NPS業界別ランキングを公開しています。NPS上位の企業は多くのロイヤルカスタマーを獲得していると推測できます。www.nttcoms.comカスタマーサクセス自身が顧客のCX向上をはかり、ロイヤルカスタマーを育成顧客側からみると、カスタマーサクセスによるフォローも支払っている対価の一部です。商品/サービスを継続的に利用していくなかで発生する課題やトラブルにカスタマーサクセスがどう対応してくれるかは、顧客のその後のロイヤリティーに大きく関わる要素です。最重要なのはスピードとタイミング顧客から何らかの問い合わせがありコンタクトをとる場合、スピーディーに対応することが何よりも大切です。とはいうものの、忙しい時間帯に電話することがベストとはいえないので、「メール連絡してしばらく後に電話」のように相手の状況しだいでタイミングをはかる必要もあります。連絡をする前にSFA/CRMだけでなくMAからも情報を収集して回答の選択肢を準備することも、顧客の時間を無駄にしない配慮として大切です。状況の変化に対応するソリューションを提供顧客側のビジネス環境は日々変化します。社内的な事情や外的要因によって顧客のビジネスモデルが変わるとき、それに適合する機能や活用方法をアドバイスしたり、ときには機能を見直してダウングレードを提案したりすることもあり得ます。カスタマーサクセスは顧客の変化に対して常にアンテナを張っておく必要があります。1to1コミュニケーションを積み重ねる導入初期には顧客の人的リソースや企業風土に合わせて、「貴社の場合はこの使い方が最適」「まずこの機能から使い始めることがおすすめ」などの提案をしたり、軌道にのってきた過程では参考になる他社の活用事例を紹介したりするなど、顧客目線に立ったアプローチが有効です。上記のようなことを考慮して顧客フォローをしていくことが望まれますが、すべての顧客に対してきめ細かく対応しようとしても限界があります。予期せぬ顧客からのクレームが入った場合の対応も重要です。個別の顧客対応で意識したい「グッドマンの法則」とはグッドマンの法則とは、1975年から数年にわたる調査で判明した消費者の苦情申し立て(クレーム)に関する法則です。古い法則ですが現代のビジネスにもあてはまります。【グッドマンの第一法則】「不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品サービスの再入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い」クレームを伝えてくる顧客は不満を解消したい、つまり企業に期待をしているので、対応がよく問題をを解決できれば満足します。一方、何も発信しない「サイレントカスタマー」は何らかの不満があったとき、そのまま解約に至ります。つまり、クレームに対して適切に対応して高評価を得た場合、その顧客は今後、ロイヤルカスタマーとなる可能性があるといえます。クレーム対応ではもうひとつ気をつけたいことがあります。それはグッドマンの第二法則に示されています。【グッドマンの第二法則】「苦情処理(対応)に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、二倍も強く影響を与える」すでに抱えている不満に加えて、カスタマーサポートあるいはカスタマーサクセスの対応が期待外れだったとき、顧客は大きな失望を他の人に伝えようとします。現代はちょっとした苦情がネットに投稿されると数時間で誰もが知るニュースとなります。ダメージはより大きいといえるでしょう。お客様のお困りごとをMA連携で事前に察知する予期せぬ顧客からのクレームをゼロにすることはできません。しかし、「なにか困っていることがある」「不満を感じている」といった状況を事前にキャッチすることは可能です。そのために、MAとのデータ連携が有効です。MAで記録される、以下のような顧客のWebアクセスログをカスタマーサクセスに連携することができます。解約ページを見る機能への不満、使いこなせないことの不満、競合他社への関心などで、顧客は解約を検討します。カスタマーサクセスができるだけ早く不満をヒアリングし解決策を提案することで、顧客の失望感を満足感に転じ、ロイヤリティーの高い顧客へと引き上げることが可能です。仕様やサポートのページを見る顧客は、「やりたいことがあるが、機能がどこにあるかわからない」「新機能を試したいけれど設定方法がわからない」など、何らかの課題をかかえている可能性があります。プランや価格のページを見る顧客は現在の費用対効果に疑問を感じているかもしれません。また、部門で予算を見直す必要性があり料金を確認することもあります。逆に、アップグレードを検討している可能性もあります。MAからの情報はアラートのほか、前向きな課題を抱えている場合もあります。いずれにしても、できるだけ早く情報を得ることがまず大切です。シャノンのマーケティングプラットフォームは、MAで取得した各種のデータをCRMに自動連携することが可能です。www.shanon.co.jpまとめ本稿のポイントは以下の3点です。1.ロイヤルカスタマーとは、企業が最も重視すべき、自社ブランドに愛着を持っている顧客です。2.カスタマーサクセスはロイヤルカスタマーを増やすために、適切な顧客フォロー、企業課題を解決する提案などを行います。3.問い合わせや予期せぬクレームへの対応は、潜在的なロイヤルカスタマーをロイヤルカスタマーへと引き上げるチャンスです。
カスタマーサクセス
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https://www.shanon.co.jp/blog/entry/ma_royal_customer/
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カスタマーサクセスは、その名の通り「顧客の成功」を実現する業務です。カスタマーサクセスは、カスタマーサポートよりも積極的に顧客にかかわります。BtoBのサブスクリプションサービスとともに2010年代以降に一般化した比較的新しい職種ですが、現代ではサブスクリプション以外やBtoCビジネスにも有効な業務として多くの企業で取り入れられ、売上につながる成果を上げています。今回は、カスタマーサクセスとはどんな業務なのか、何をめざすのかを確認したあと、シャノンのカスタマーサクセス立ち上げ時と現在の実例をご紹介します。目次カスタマーサクセスとは、LTV最大化をめざす業務カスタマーサクセスとはカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いカスタマーサクセスが必要とされる背景カスタマーサクセスとはどんな業務か、メリットとデメリットは何かカスタマーサクセスの具体的な業務とKPIカスタマーサクセス導入のメリットとデメリットシャノンのカスタマーサクセス部門立ち上げと、他部門と連携の具体例カスタマーサクセスへの取り組み1年で解約数が7割減マーケティング部門のMAとカスタマーサクセスを連携する、5つの具体例まとめカスタマーサクセスとは、LTV最大化をめざす業務カスタマーサクセスとはどんな業務か、注目される背景、カスタマーサポートとの違いなどを確認していきます。カスタマーサクセスとはカスタマーサクセス(CustomerSuccess)を直訳すると「顧客の成功」ですが、ビジネス用語としてのカスタマーサクセスは、「顧客の成功」を実現するための業務、部門、専門職のことをいいます。カスタマーサクセスの業務は、企業の売上を創出するマーケティングと営業の活動のなかで位置づけられます。以下は現代の営業スタイルについての著書『ザ・モデル』で紹介されている図です。図が示すように、カスタマーサクセスは営業活動の結果取引が開始した顧客に対して、顧客の成功を働きかける業務です。図中のLTV(顧客生涯価値)については後でくわしくご紹介します。カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い顧客を支援するという意味でカスタマーサクセスと似ていて、もっと古くからある業務に「カスタマーサポート」があります。違いを確認しておきましょう。カスタマーサポートは顧客から疑問や不満、クレームがあった場合に対応します。しかし、カスタマーサポートに一切連絡をしてこない顧客は商品やサービスに満足しているのでしょうか。実際には、カスタマーサポートに連絡をしてくる顧客よりも多くの顧客が、静かにサービスを解約したり、商品の購入をやめたりしています。カスタマーサクセスは、このような「サイレントカスタマー」にも能動的に関わります。以下の表でカスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いをまとめています。カスタマーサポートカスタマーサクセス目的顧客の疑問・不満を解決顧客のビジネス成功を支援スタイル受動的(リアクティブ)能動的(プロアクティブ)顧客との接点メールや電話対面を含む顧客フォロー個別的継続的KPI応答件数など解約率、LTVなどカスタマーサクセスが必要とされる背景カスタマーサクセスの業務が重視されるようになった背景には、SaaSとサブスクリプションの浸透があります。SaaS(SoftwareasaService)とは、クラウド上に作られたアプリケーションやサービスを、インターネットを通じて利用することをいいます。現代は、MA・SFA・CRM、ストレージ、会計ソフトなど多くのサービスがこの形で提供されています。SaaSの多くは月額××円などの定額制で、このような料金システムを有するサービスを、サブスクリプションといいます。サブスクリプションモデルは顧客にとって契約のハードルが低く購入しやすい一方、解約することも簡単です。したがって企業側は解約されないために、顧客がサービスを十分に活用できるよう、契約後のフォローに務める必要性が生じました。こうして2000年代頃、SaaSビジネスの拡大とともにカスタマーサクセスが注目されるようになりました。BtoBのSaaSビジネスから始まったカスタマーサクセスは実績を上げ、今ではBtoCや幅広い業種に広がっています。たとえば飲食店や小売業などの場合、カスタマーサクセスは顧客が他社を選ばずに「リピート購入」を継続するよう、働きかける業務です。カスタマーサクセスとはどんな業務か、メリットとデメリットは何かカスタマーサクセスの業務内容、導入によるメリットとデメリットを確認します。カスタマーサクセスの具体的な業務とKPIカスタマーサクセスの具体的な業務は、以下のように多岐にわたります。商品やサービスの初期設定の支援オンボーディング(基本機能を使えるようになる)を支援利用状況をモニタリングし、利用が少ない顧客をフォロー顧客の個別課題をヒアリングし、解決策を提供顧客の要望をヒアリングし、開発部門に連携アップセル(追加購入)やクロスセル(他の商品/サービスの購入)のニーズを担当部門に連携ユーザー会などでユーザー間のコミュニケーションを促進顧客に役立つ最新情報の提供カスタマーサクセスのKPIとしては、解約率がよく用いられます。カスタマーサクセスは、顧客がある商品・サービスを十分に活用して満足している状態をめざすことはもちろんですが、そのことが顧客企業の成長に明確に貢献している状態をゴールとします。カスタマーサクセス導入のメリットとデメリットカスタマーサクセス部門が機能することにより、以下のようなメリットをもたらします。1) CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させるCX(CustomerExperience)とは顧客体験のことです。CXは商品/サービスを認知したときに始まり、営業担当者とのやりとり、契約・納品、購入した商品やサービスの利用まで、すべての段階における体験をいいます。そのなかでカスタマーサクセスが主に関わるのは「購入後」です。BtoB場合、CXの基準は明確です。購入した商品やサービスを利用した結果、「コスト削減」「売上アップ」などの数値化できる具体的な成果があれば、価値あるCXといえます。カスタマーサクセスは、顧客が対価以上の利益や利便性を得られるよう、支援します。2)解約率(チャーンレート)を下げる解約率、チャーンレート(ChurnRate)はカスタマーサクセスが重視する指標です。顧客が解約するときの理由はさまざまです。「コストに見合う効果が得られなかった」「担当者に他の業務もあり、ツールを使いこなせなかった」「不明点を問い合わせたときのサポートデスクの対応が不満だった」このような企業の事情は、カスタマーサクセスが対応することで回避できた可能性があります。顧客が解約を決断する前に、企業の課題を理解してソリューションを提案したり、他のプランを勧めたりといったフォローをします。定額サービスにおけるチャーンレートは、商品の販売においてはリピート購入をしなくなる「顧客の離脱率」が同じ意味の指標です。3)LTVを最大化させるLTV(LifeTimeValue)は顧客生涯価値と訳され、一顧客が自社にとってどのくらいの利益をもたらすのかを長期的に計測した指標です。高いコストをかけて新規顧客を獲得するよりも、既存顧客と長く取引を継続することを重視するべきという考え方にもとづいています。LTVを最大化するためには、アップセル・クロスセルを増やすことも重要です。アップセルとはより高額な商品/サービスを販売すること、クロスセルは、自社の別の商品/サービスを販売することです。LTVの最大化はマーケティングや営業などと共有する大きな目標ですが、カスタマーサクセスはその最前線に立っているといえます。4)多くのロイヤルカスタマーを創出するロイヤルカスタマーとは、自社の商品/サービスを大いに活用し、競合他社から購入する可能性が低い、「お得意様」あるいは「ファン」のような顧客のことをいいます。さらに、他の人に自社の商品やサービスを「おすすめ」してくれるのが理想的なロイヤルカスタマーです。顧客をこのようなロイヤルカスタマーへと引き上げるのもカスタマーサクセスの役割です。※ロイヤルカスタマーについては「ロイヤルカスタマーとは?その定義と、MA連携でロイヤルカスタマーを増やす手法」で詳しくご紹介しています。一方、カスタマーサービスを導入するデメリットは何でしょうか。カスタマーサービス部門が機能を果たすようになればデメリットはありません。しかし、当初の導入にあたっては以下のような障壁があります。1) 人材の確保が難しいカスタマーサポート部門を立ち上げるのに十分な人材が確保できない、新規に採用しようとしても簡単ではないという問題があります。2) 他部門との連携が難しいカスタマーサクセスは常にマーケティングや営業と連携して仕事をしていきます。分業化と専門化を進めながら成果を出すにはスピーディーな情報の連携や目標の共有が欠かせません。企業がカスタマーサクセスを導入する場合、「解約率が上がってしまった」などの課題がきっかけになっています。このあと、シャノンがカスタマーサクセスを導入したときの体験、現在実施しているカスタマーサクセスとマーケティングの連携についてご紹介します。シャノンのカスタマーサクセス部門立ち上げと、他部門と連携の具体例シャノンがカスタマーサクセス部門を立ち上げたときのストーリー、カスタマーサクセスとマーケティングの連携によって成果を上げている方法についてご紹介します。カスタマーサクセスへの取り組み1年で解約数が7割減国産MAを提供するシャノンはかつて、競合といえる商材が少なく、ブルーオーシャンで順調に営業活動をしていました。ところが、2015年頃から外資系MAベンダーが続々と日本に進出してきたことにより一気に市場はレッドオーシャン化して、シャノンの顧客も他社に流れ、解約率が上昇しました。そこで2018年にカスタマーサクセスへの本格的な取り組みをスタート。1年後には解約数を7割低減させることができました。6人の担当者が定例ミーティングや日々のコミュニケーションで顧客の意見や課題を吸い上げ、その解決策を提供。その結果は四半期ごとに評価していきました。この頃立ち上げたユーザー会は現在も継続しています。※シャノンのカスタマーサクセス立ち上げについて、以下のインタビュー記事でさらにくわしくご紹介しています。国産MAベンダーのシャノン、カスタマーサクセス実践1年で解約件数が7割減にマーケティング部門のMAとカスタマーサクセスを連携する、5つの具体例マーケティングはコールドリードをホットリードへと引き上げる、カスタマーサクセスは顧客を成功へと引き上げる、という似たベクトルの目標を持ち、どちらの部門も1to1の継続的なコミュニケーションが重要なので、両部門にはナレッジの親和性があるといえます。シャノンでは、カスタマーサクセスとマーケティングの連携を行っています。実際に実践しているデータ連携の具体例をいくつかご紹介します。1) サポートページを見ている営業担当やカスタマーサクセスに直接連絡はないものの、サポートページへのアクセスがあった場合は、仕様や操作方法などについて疑問が発生しています。早めにカスタマーサクセスから連絡をとり、問題解決できたか、ほかに課題はないかなどを確認するべき事例です。2) 解約に関連するページを見ている最も素早く対応するべき「解約アラート」もMAで取得しカスタマーサクセスに連携できます。前述したようにサブスクリプションサービスの場合は簡単に解約できるので、迅速な対応が求められます。3) 違う商品/サービスの資料をダウンロードしている顧客が契約中のサービス以外にも関心を示していると考えられます。カスタマーサクセスが状況をヒアリングし、クロスセルの可能性がある場合は営業担当などにパスします。4) ウェビナーへの申込があった主に見込み客向けであるマーケティング部門主催のウェビナーに顧客がエントリーすることもあります。情報を得たカスタマーサクセスは、顧客事情に合わせて個別にフォローします。アップセル・クロスセルへとつながる可能性もあります。5)顧客企業の別の部署、別の社員からのコンタクトがあったカスタマーサクセスがコミュニケーションをとっている顧客担当者とは別の人からの、LPへのアクセス・ウェビナー申込などがあり新規リードとしてMAに登録された場合です。このときもアップセル・クロスセルの可能性が考えられるので、まずカスタマーサクセスが情報収集し、その後は適切な部門で担当します。シャノンのMAでは、上記のうち1)~4)のようなデータを自動連携することができます。5)の場合だけは一元化されていないデータなので、登録された企業名を確認して手動で連携しています。まとめ本稿のポイントは以下の3点です。カスタマーサクセスとは「顧客の成功」を実現する業務で、BtoBのサブスクリプション型サービスの解約を減らすために生まれました。今はBtoCやサブスクリプション以外でも導入されています。カスタマーサクセスは顧客が価値あるCXを積み重ねることを目指し、その結果としてLTVを最大化することをゴールとして、能動的に顧客に関わります。カスタマーサクセス業務にとって、MAが取得する情報の連携が有効です。
https://www.shanon.co.jp/blog/entry/ma_customer_success/